合本 壬生義士伝【文春e-Books】
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発行者による作品情報
小雪舞う一月の夜更け、大坂・南部藩蔵屋敷に、満身創痍の侍がたどり着いた。貧しさから南部藩を脱藩し、壬生浪と呼ばれた新選組に入隊した吉村貫一郎であった。“人斬り貫一”と恐れられ、妻子への仕送りのため守銭奴と蔑まれても、飢えた者には握り飯を施す男。元新選組隊士や教え子が語る非業の隊士の生涯。
浅田文学の金字塔にして新選組三部作の第一作、待望の合本!
APPLE BOOKSのレビュー
浅田次郎が初めて手掛けた時代小説。近藤勇や土方歳三、沖田総司といった新選組の中心人物ではない、一人の隊士の目を通して幕末を描いている。鳥羽・伏見の戦いで負傷した主人公、吉村貫一郎が、死を迎えるにあたって過去を振り返る姿と、大正時代に取材を受けたかつての隊士が吉村について語る姿をカットバックで描きながら、吉村という武士の真の姿を浮かび上がらせていく。隊内で一目置かれる剣の腕前を持ちながら、勤皇でも佐幕でもなく、ただ妻子のため、金のために新選組に入り、人を斬る吉村。その姿は農民や町民、下層武士の集団にすぎなかった新選組の実像、そして明治維新の真相にまで迫り、武士道とは何か、真の義とは何かを読者に問いかける。ドラマ、映画化に加えて宝塚でも舞台化された傑作で、後には新選組三部作へと昇華。時代の変わり目に輝きを放った、敗者の美学に酔いしれる一冊。登場人物がそれぞれのお国言葉で語っているところが親しみやすく、臨場感もたっぷりで読み始めると止まらない。