銃・病原菌・鉄 上‪巻‬

APPLE BOOKSのレビュー

カリフォルニア大学ロサンゼルス校教授にして進化生物学者、生物地理学者であるジャレド・ダイアモンドが、1万3000年にわたる人類史をひもときながら、世界の富や権力が現在のように不均衡になったのはなぜか、という疑問を解き明かすノンフィクション。1997年に刊行されるや否や、世界的なベストセラーとなった。鳥類の進化の研究でフィールドワークに訪れた著者は、ニューギニア人のヤリからこう問われる。「あなたがた白人は、たくさんのものを発達させてニューギニアに持ち込んだが、私たちニューギニア人には自分たちのものと言えるものがほとんどない。それはなぜだろうか？」。その答えが本書には示されている。人類社会を形成した征服と疫病、そして殺戮の歴史。ヨーロッパ人が他の大陸を植民地化できた直接の要因を「銃・病原菌・鉄」というワードで表現した著者は、それらがなぜヨーロッパで生まれたのかを解明していく。狩猟採集民の生活様式から食料生産への移行、植物の栽培化や動物の家畜化。これらの歴史に大陸間で差異がある理由を、さまざまな事実を紹介しながら考察した著者の指摘は、読者に知的興奮をもたらすことだろう。必読の名著。