ぎょらん(新潮文庫)
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- ¥950
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発行者による作品情報
人が死ぬ際に残す珠「ぎょらん」。噛み潰せば、死者の最期の願いがわかるのだという。地方都市の葬儀会社に勤める元引きこもり青年・朱鷺は、ある理由から都市伝説めいたこの珠の真相を調べ続けていた。「ぎょらん」をきっかけに交わり始める様々な生。死者への後悔を抱えた彼らに珠は何を告げるのか。傷ついた魂の再生を圧倒的筆力で描く7編の連作集。文庫書き下ろし「赤はこれからも」収録。(解説・壇蜜)
APPLE BOOKSのレビュー
人が死ぬ瞬間に強く願ったことが小さな赤い珠(たま)「ぎょらん」となって残されることがある。そんなぎょらんを巡り、人間の生と死に向き合う人々の群像劇。児童虐待のテーマを真正面から取り上げた『52ヘルツのクジラたち』の町田そのこが今作で描くのは、喪失と再生の物語。親友の自殺を目の当たりにした朱鷺は、大学をやめて引きこもりのニートとなった。彼が固執していたのは「ぎょらん」という死者が残す赤い珠を描いたマンガ。深いようで、透明で、美しい赤色をしたぎょらんは本当に存在するものなのか。なんとか働き始めた葬儀屋で朱鷺はぎょらんの存在を知る人々と出会う。それぞれ「死」と向き合う七つの連作が、複雑に絡み合いながら、最後は一本につながっていく。あなたは身近な人が最後に遺した思いや、願いを受け止められる覚悟はあるだろうか…。「死」に直面し、立ち止まり、動けなくなってしまった主人公たちの物語が、ぎょらんと共に静かに動き出す。