



滅びの前のシャングリラ
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4.1 • 30件の評価
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- ¥880
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発行者による作品情報
「明日死ねたら楽なのにとずっと夢見ていた。
なのに最期の最期になって、もう少し生きてみてもよかったと思っている」
「一ヶ月後、小惑星が衝突し、地球は滅びる」。学校でいじめを受ける友樹、人を殺したヤクザの信士、恋人から逃げ出した静香。そして――荒廃していく世界の中で、人生をうまく生きられなかった人びとは、最期の時までをどう過ごすのか。滅びゆく運命の中で、幸せについて問う傑作。
〈巻末対談〉新井素子×凪良ゆう
APPLE BOOKSのレビュー
映画化された『流浪の月』など、シビアな現実を生きる人々の姿を情感あふれる筆致で描く凪良ゆう。本作は、1か月後に滅亡する地球を舞台に、4人のエピソードを連作でつづる。いじめを受けている男子高生、人の道を外れて生きる中年男性、ギリギリで生活をつなぐシングルマザー、虚構の世界に生きるカリスマシンガー。それぞれに重い事情を抱えた登場人物たちは、滅亡に向かって荒廃していく世界で破れかぶれの行動をしながらも、タフに生き続ける。そして何度もピンチに直面しながら押さえ込んでいた思いと向き合い、自分らしさを取り戻していく。最後の1か月間、世界はどんどんパニックに陥っていくものの、一人一人の生活にフォーカスすれば、食べたり寝たり、愛しあったり憎みあったり、ただひたすらに日々の営みが続く。そして終わりに向かう日々の中でも、人は変わることができる。そんな人間の強さや弱さ、おかしさや愛しさを、どこかユーモラスなタッチで描いている。