すべての、白いものたちの
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3.8 • 18件の評価
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- ¥880
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発行者による作品情報
アジア初のブッカー国際賞作家による奇蹟の傑作が文庫化。おくるみ、産着、雪、骨、灰、白く笑う、米と飯……。朝鮮半島とワルシャワの街をつなぐ65の物語が捧げる、はかなくも偉大な命への祈り。
ノーベル文学賞受賞!
ハン・ガン作品、どれから読んだらいいかわからない……という方には、個人的には『すべての、白いものたちの』をお勧めしたいです。
詩のように淡く美しく、それでいて強く心をゆさぶる名作です
ーー岸本佐知子
生後すぐに亡くなった姉をめぐり、ホロコースト後に再建されたワルシャワの街と、朝鮮半島の記憶が交差する。
文庫化にあたり、訳者の斎藤真理子による「『すべての、白いものたちの』への補足」、平野啓一郎による解説「恢復と自己貸与」を収録。
APPLE BOOKSのレビュー
白いものを集め、白いものが象徴する何かを丹念にすくいあげた、死と生を巡るひそやかな物語。『菜食主義者』で2016年にアジア語圏初のマン・ブッカー賞国際賞を受賞し、2024年にはアジア人女性として初めてノーベル文学賞を受賞したハン・ガン(韓江)。本作は2度目のブッカー国際賞候補となった彼女の代表作の一つ。きわめて詩的で、小説というよりも連作散文詩といった趣があり、各章は短いながらも深い余韻を残す。本作は3章構成となっており、2章では語り部たる「私」から、亡くなった姉が「私」を通して叙述するという特異な構成になっている。死と生と向きあいながら自分の人生を自身の掌中のものとしていく物語と読めるが、読後にこの白い世界に対してどんな言葉をつづり、また句読点を打つのか、その判断は読者に委ねられている。白紙の上に余白をたっぷりと残しながら、選び抜かれた言葉を一つ一つペンで紡いでいくような物語は、降り積もる雪のように読み手の感情を満たしていく。不純物のない、限りなく静謐(せいひつ)なこの世界は、折に触れて立ち戻りたいと思わせる。じっくりと時間をかけて、何度でも読み返したくなる作品だ。あとがきとなる「作者の言葉」が併録されているので、この作品の背景情報に触れられるのもうれしい。