DTOPIA
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3.7 • 14件の評価
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- ¥1,700
発行者による作品情報
恋愛リアリティショー「DTOPIA」新シリーズの舞台はボラ・ボラ島。ミスユニバースを巡ってMr.LA、Mr.ロンドン等十人の男たちが争う──時代を象徴する圧倒的傑作、誕生!
第172回芥川賞受賞作
安堂ホセは、物語の磁石を持っている。現実世界で排除された不都合で不穏でヤバい砂つぶてのような言葉を、暴力と倫理の磁石で吸い寄せ、反発させ、交渉させ、渦巻かせる。あらゆる倫理が覆され、暴力が吹き荒れている今、「暴力から暴を取りはずす旅」の物語が出現したことは、一つの事件だ。
読もう! 旅立とう! 旅によって運ばれるのは、あなた自身だ。
──柳美里
いくつもの物語が交じり合い、壮大な展開が繰り広げられ、「失われた歴史」が復元されるラストに感動した。
──高橋源一郎
強烈な皮肉とクールな文体。
私たちの眼差しを切り開く手術(オペ)のような小説。
どこへ連れていかれるのかわからず、ひと晩で読み終えた。
──佐藤究
語りと構造、ストーリーの面白さの中に、資本主義や植民地主義、ウクライナ戦争やガザでの虐殺についての鋭い批判が、当然のように滑り込む。
極めて刺激的かつ、開放的。国境を越えて、世界にリコメンドしたい。
──須藤輝彦
この小説を読むことは自らの感性を問い直すことである。
異性愛主義や人種という不適切なカテゴライズにあらがうための、必読の一作。
──渡邉英理
典型的な物語に閉じ込められないための強烈な意志、ねじ伏せられない悪意と復讐がこれほどまでに徹底された作品はなかなかない
──水上文
APPLE BOOKSのレビュー
第172回(2024年下半期)芥川賞受賞作。『ジャクソンひとり』(2022年)で鮮烈なデビューを果たした気鋭の作家、安堂ホセは3作目となる本作で“恋愛リアリティショー”を切り口に選んだ。ブラックミックスの当事者として、差別や抑圧をあぶり出す物語を書いてきた彼の作品としては意外だと感じるかもしれない。ただし、その印象は読み始めてすぐに覆される。むしろ本作は、過去の作品以上に安堂の強烈な作家性が刻まれた一作となっている。舞台は恋愛リアリティショーの“DTOPIA”が撮影されるボラ・ボラ島。白人のミスユニバースを巡り、世界各国から集った10人の男が争奪戦を繰り広げている。しかし、物語はそこから大きく旋回し、出演者の一人である男の過去へとさかのぼっていくのだった。二人称で語られる男の物語は、人種やLGBTQの問題から核や戦争へと際限なく広がっていく。バイオレンスの描写は思わずおじけづいてしまうほど生々しく、リアリティショーの箱庭感との対比も強烈だ。視聴者が見たいものしか見せないリアリティ番組はエディットされた世界であり、本作を読み進めると、そのフェイクからリアルへと胸元をつかんで引き戻されるような力を感じる。読後には昨日までと世界が少し違って見えるのではないか。