ツミデミック
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発行者による作品情報
【第171回直木賞受賞作!】大学を中退し、夜の街で客引きをしている優斗。仕事中に話しかけてきた大阪弁の女は、中学時代に死んだはずの同級生の名を名乗った――「違う羽の鳥」 失業中で家に籠もりがちな恭一。小一の息子・隼が遊びから帰ってくると、聖徳太子の描かれた旧一万円札を持っていた。近隣の一軒家に住む老人にもらったというそれを煙草代に使ってしまった恭一だが――「特別縁故者」 鮮烈なる“犯罪”小説全6話
APPLE BOOKSのレビュー
第171回(2024年上半期)直木賞受賞作 - 新型コロナウイルスのパンデミックと罪をテーマにした短編集。死んだはずの同級生を名乗る女性との遭遇を描く「違う羽の鳥」。近所で見かけた配達員に会うため、まるでソーシャルゲームのガチャを回すようにフードデリバリーにはまっていく主婦を描いた「ロマンス☆」。独居老人が高額のタンス貯金を持っていることを知った失業中の男を巡る「特別縁故者」など、全6編を収録。感染症の世界的な流行を指し、日本では感染爆発とも訳されたパンデミック。本作は、2020年1月に緊急事態宣言された新型コロナウイルスのパンデミックが人々に及ぼした社会的、心理的な影響や、それによって起きた広範囲の出来事や罪を浮き彫りにする。とはいえ「罪」と一言で言っても、その濃淡はさまざま。ぞっとするような救いのない話や、心温まる希望に満ちたストーリーが、一穂ミチならではの変幻自在な語り口で紡がれる。読了後、パンデミックとは何だったのか、そして私たちの何が変わってしまったのかを改めて考えさせられる。