恋とか愛とかやさしさなら
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3.8 • 46件の評価
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- ¥1,600
発行者による作品情報
プロポーズの翌日、恋人が盗撮で捕まった。
カメラマンの新夏は啓久と交際5年。東京駅の前でプロポーズしてくれた翌日、啓久が通勤中に女子高生を盗撮したことで、ふたりの関係は一変する。「二度としない」と誓う啓久とやり直せるか、葛藤する新夏。啓久が“出来心”で犯した罪は周囲の人々を巻き込み、思わぬ波紋を巻き起こしていく。
信じるとは、許すとは、愛するとは。
男と女の欲望のブラックボックスに迫る、
著者新境地となる恋愛小説。
わたしの心と体を通ってきた、無数の、犯罪の名前が付かないたくさんの傷のことを考えた。苦しかった。読めてよかった。
――高瀬隼子(作家)
僕はこの物語を、生涯忘れることはありません。
――けんご(小説紹介クリエイター)
女性が置かれている地獄のある側面が突きつけられる。
――スケザネ(書評家)
APPLE BOOKSのレビュー
直木賞作家の一穂ミチが本作で描いたのは、「もし身近な人が性犯罪の加害者になったら」そして「自分が加害者になったら」…その二つの視点から見つめる人間ドラマだ。大好きな彼、啓久(ひらく)からプロポーズされたフォトグラファーの新夏(にいか)。しかしその夜に彼が女子高生を盗撮して捕まったという連絡を受け、幸せの時間が一気に崩れ去っていく。物語の前章では、新夏の苦しい自問自答の日々がつづられる。なぜ、啓久は盗撮をしたのか。罪を犯した彼を自分は受け入れられるのか、それとも受け入れられないのか。後章では、事件から時間が経過した後の啓久の視点で物語が語られる。猛省の日々をどれだけ送ったとしても、事件の前の平穏で幸せな日々は二度と戻ってはこない。軽い気持ちで犯したとはいえ、性犯罪は加害者の心に大きな傷を残す重大な罪であり、許されるべきものではない。自分が加害者であることをまざまざと突きつけられる現実。終始、心が苦しくなるような描写に、出来心で犯した罪の大きさを実感させられる。現代社会で毎日のように起きている性犯罪に切り込み、加害者や被害者だけでなく、巻き込まれたその周りの人々の苦しみや葛藤までも丁寧にすくい上げた本作は、性加害というテーマを深く、多角的に考えるきっかけを与えてくれる。