



生殖記
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4.2 • 56件の評価
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- ¥1,700
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発行者による作品情報
『正欲』から3年半ぶりとなる最新長篇。
とある家電メーカー総務部勤務の尚成は、同僚と二個体で新宿の量販店に来ています。
体組成計を買うため――ではなく、寿命を効率よく消費するために。
この本は、そんなヒトのオス個体に宿る◯◯目線の、おそらく誰も読んだことのない文字列の集積です。
APPLE BOOKSのレビュー
前代未聞の語り手が、人間の生きるという行為の真意を鋭く問いかけてくる衝撃作。『桐島、部活やめるってよ』『何者』といった代表作で、現代社会に生きる人々の葛藤を描き続けてきた朝井リョウが、本作ではさらなる新境地を切り開いている。主人公の尚成は、家電メーカーで働く33歳の男性。ある日、彼は同僚と共に家電量販店を訪れる。その目的は、“効率よく寿命を消費するため”だった。ごく普通のサラリーマンの日常が語られるかと思いきやそうはならないのは、本作の語り手に重要なポイントがあるからだ。拡大、成長を善とし、常に次を求め続ける人間たちが作り上げた共同体を、本作の語り手はどこか突き放した視点から眺めている。そしてその視点は、共同体が孕(はら)んでいる柔らかな抑圧や、現代に生きる我々が日々うっすらと感じている居心地の悪さをあぶり出していく。言語化できない違和感を抱えながら読み進めるうちに、その正体がふと立ち現れ、驚愕(きょうがく)させられるはずだ。唐突に始まるオフビートな雑学談議と、これまた唐突に投げかけられる哲学的問いかけの対比も面白い。
カスタマーレビュー
考え方が変わる
働くということを共同体を肯定するといった言語化にただただ共感した。
自分にとっての「当たり前」を見直すきっかけになった。
以下感じたこと・印象的だったことを箇条書きで述べる。(考えの整理用)
・自分の行動・発言を見直した。マイノリティへの「理解」や「同情」は、自分がマジョリティに属していることの驕りであり、上から目線での行動である。
・自分の性に対する行動も、無意識的に未来への発展・成長のためのものであると思うと、改めて自分が動物であり、「本能に支配されている」のだということを感じた。
・私の中の「生殖本能」は、自分のことをどう思っているのだろうと想像し、不思議な気持ちになった。
・「自分の属する共同体の発展・成長が人生の目的」「共同体への貢献度と幸福度との関係性」自分はどうだろうかと考えた。
凄い本に出会えた
日頃考えていた社会に対するモヤモヤを上手く描写している。これを言語化してくる朝井リョウが怖いまである。