よむよむかたる
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4.0 • 1件の評価
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- ¥1,800
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発行者による作品情報
本を読み、人生を語る、みんなの大切な時間
この小説は、著者の母が参加していた読書会の風景がきっかけで生まれました。
本を読み、人生を語る。人が生のままの姿になり言葉が溢れだす。そんな幸福な時間をぎゅっと閉じ込めたい、という願いが込められた物語です。
〈あらすじ〉
小樽の古民家カフェ「喫茶シトロン」には今日も老人たちが集まる。月に一度の読書会〈坂の途中で本を読む会〉は今年で20年目を迎える。
店長の安田松生は、28歳。小説の新人賞を受賞し、本を一冊出したが、それ以降は小説を書けないでいる。昨年叔母の美智留から店の運営を引き継いだばかりだ。その「引き継ぎ」の一つに〈坂の途中で本を読む会〉のお世話も含まれる。何しろこの会は最年長92歳、最年少78歳、平均年齢85歳の超高齢読書サークル。それぞれに人の話を聞かないから予定は決まらないし、連絡は一度だけで伝わることもない。持病の一つや二つは当たり前で、毎月集まれていることが奇跡的でもある。安田は店長の責務として世話係だけをするつもりだったが、「小説家」であることを見込まれて、この会の一員となる。
安田は読書会に対しても斜に構えていた。二作目が書けない鬱屈がそうさせていたのかもしれない。しかし、読書会に参加し、自分でも老人たちと「語る」ことで心境に変化が訪れる――。
APPLE BOOKSのレビュー
北海道にある古民家カフェを舞台に、平均年齢85歳の後期高齢者たちが集う読書サークルの日々を描く『よむよむかたる』。カフェの新店主であり、サークルの最年少会員となった20代の作家、安田の視点でつづる会員たちの日常は、スローで、脱線だらけで、とてもにぎやか。かみ合っているような、いないような会話から、月に1度みんなで無事に集まって、自分たちで選んだ課題本を共に読める喜びと興奮が伝わる。シニアたちは物語に自分の人生を重ね合わせ、泣いたり笑ったりしながら自由な視点で解釈し合う。自らの持病すらも笑い飛ばしてしまう姿は底抜けに明るく見えるが、言葉の端々にやがて訪れる最期の時への思いがにじみ、人生は有限であることを実感させられる。その光景は、作家としてスランプに陥り、やさぐれていた安田の心を少しずつ解きほぐしていく。さらに、安田の叔母である美智留がカフェを立ち上げたいきさつや、カフェの外から読書会をのぞく謎の人物などが加わり、絡み合う人生模様が優しさに満ちた光景へとつながっていく。本が結ぶ心の絆に触れ、その温かさを味わえる物語。