われは熊楠
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発行者による作品情報
奇人にして天才――カテゴライズ不能の「知の巨人」、その数奇な運命とは
「知る」ことこそが「生きる」こと
研究対象は動植物、昆虫、キノコ、藻、粘菌から星座、男色、夢に至る、この世界の全て。
博物学者か、生物学者か、民俗学者か、はたまた……。
慶応3年、南方熊楠は和歌山に生まれた。
人並外れた好奇心で少年は山野を駆け巡り、動植物や昆虫を採集。百科事典を抜き書きしては、その内容を諳んじる。洋の東西を問わずあらゆる学問に手を伸ばし、広大無辺の自然と万巻の書物を教師とした。
希みは学問で身をたてること、そしてこの世の全てを知り尽くすこと。しかし、商人の父にその想いはなかなか届かない。父の反対をおしきってアメリカ、イギリスなど、海を渡り学問を続けるも、在野を貫く熊楠の研究はなかなか陽の目を見ることがないのだった。
世に認められぬ苦悩と困窮、家族との軋轢、学者としての栄光と最愛の息子との別離……。
野放図な好奇心で森羅万象を収集、記録することに生涯を賭した「知の巨人」の型破りな生き様が鮮やかに甦る!
APPLE BOOKSのレビュー
第171回(2024年上半期)直木賞候補作 - 数々の文学賞を受賞した実力派作家の岩井圭也が、日本が誇る「知の巨人」として知られる学者、南方熊楠(みなかたくまぐす)の激動の生涯を描いた評伝小説。「己は何者なのか」という命題に突き動かされ、人並み外れた行動力と好奇心で動植物や昆虫、粘菌、星座まで、この世界の森羅万象を知ろうとした熊楠。和歌山の豪商一家に生まれながら、幼少期から野山を駆け回って採集と研究に没頭する姿から天狗(てんぎゃん)と呼ばれた彼は、時にアメリカやイギリスといった海外にまで活動拠点を移しながら、博物学や民俗学、生物学といったさまざまなジャンルの学問を自らの欲望のままに究めていく。しかし、好きなことだけに没頭し続ける熊楠の生きざまは、彼を支え続けた父親や実弟、そして最愛の息子との関係を決定的に変えてしまうのだった…。綿密な取材に加え、著者自身の研究者としての経験を生かしながら熊楠の内面における葛藤に生々しく迫り、読者を一気に引き込む手腕は見事の一言で、登場人物たちの生き生きとした紀州弁も作品の世界観の構築に一役買っている。自分は何のために生まれてきたのか、誰もが思い悩む永遠の問いに一つの解を示してくれる作品だ。