ニーチェ (Century Books―人と思想)
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- ¥850
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発行者による作品情報
「人と思想」は、世界の思想家の生涯とその思想を、当時の社会的背景にふれながら、立体的に解明した思想の入門書です。思想家の生涯を交友関係や、エピソードなどにもふれて、興味深く克明に記述、その主要著書を選択して、概説とその中心となる思想を、わかりやすく紹介してあります。平易な記述と生き生きとした表現を心がけ、新鮮な印象が残るように努めました。一般の方々のハンディな教養書として、また学生・生徒の参考読物として、広く本書をおすすめします。
【Century Books】人と思想 22 ニーチェ
ニーチェほど、徹底して「反(アンティ)」の立場を貫きとおした思想家も、めずらしいであろう。かれは、その著書の標題も暗示しているように、流行に背を向ける「反時代的考察」家であり、大地の上なる生のために彼岸を拒否する「反キリスト者」であり、「善悪の彼岸」に立脚して生きる反道徳主義者(インモラリスト)であり、「偶像のたそがれ」を告知して「一切価値の転換」を志すニヒリストであることを、無上の誇りとして生きた。神の死に代わって地上の生を主宰すべき「超人」の産出は、こうした破壊の犠牲によってのみ可能である、と信じたからである。
神なき人生をむしばむニヒリズムからの快癒(かいゆ)を念ずるがゆえに、ニヒルな想念のすみずみまで分け入ってその空しさを摘出しようとしたのが、ニーチェであった。私どもは、こうしたニーチェの真摯(しんし)な思索態度から、現代人としての生きることの厳しさを学びとるべきなのである。