ラウリ・クースクを探して
-
- ¥1,700
-
- ¥1,700
発行者による作品情報
1977年、エストニアに生まれたラウリ・クースク。コンピュータ・プログラミングの稀有な才能があった彼は、ソ連のサイバネティクス研究所で活躍することを目指す。だがソ連は崩壊し……。歴史に翻弄された一人の人物を描き出す、かけがえのない物語。
APPLE BOOKSのレビュー
IT先進国として知られるエストニアを舞台にした青春小説であり、またプログラミング黎明(れいめい)期の物語としても楽しめる作品。次代を担うジャンルレスな作家、宮内悠介が手掛けた第170回直木賞ノミネート作。コンピュータプログラミングの才能があったラウリ・クースクは、ソ連のサイバネティクス研究所で働くことを夢見る。そして、イヴァンとカーテャの2人と出会い、かけがえのない輝かしい時を過ごす。だが、ソ連は崩壊し3人は散り散りになってしまう…。天才として将来を嘱望された過去から一転し、自ら袋小路に迷い込んでしまったラウリの人生は、かの地から遠く隔たった我々も共感できる。それは革命とは縁のない、特別ではない誰にでもありえた人生の物語だ。孤独だったラウリが、イヴァンやカーテャとの出会いで感じた“居場所がある”という温かな感覚は、歴史の波に翻弄(ほんろう)されながら次第に失われていく。しかし、そうした時代の移ろいを経てもなお、揺るぎないものがある。物語を叙述する役目を担う、ラウリの足跡をたどる「わたし」と共に、読み手もまた誰かの、あるいは自身の歴史を反すうする旅に出かけることだろう。