令和元年の人生ゲーム
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4.0 • 10件の評価
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- ¥1,600
発行者による作品情報
「まだ人生に、本気になってるんですか?」
この新人、平成の落ちこぼれか、令和の革命家か――。
「クビにならない最低限の仕事をして、毎日定時で上がって、そうですね、皇居ランでもしたいと思ってます」
慶應の意識高いビジコンサークルで、
働き方改革中のキラキラメガベンチャーで、
「正義」に満ちたZ世代シェアハウスで、
クラフトビールが売りのコミュニティ型銭湯で……
”意識の高い”若者たちのなかにいて、ひとり「何もしない」沼田くん。
彼はなぜ、22歳にして窓際族を決め込んでいるのか?
2021年にTwitterに小説の投稿を始めて以降、瞬く間に「タワマン文学」旋風を巻き起こした麻布競馬場。
デビュー作『この部屋から東京タワーは永遠に見えない』のスマッシュヒットを受けて、
麻布競馬場が第2作のテーマに選んだものは「Z世代の働き方」。
新社会人になるころには自分の可能性を知りすぎてしまった令和日本の「賢すぎる」若者たち。
そんな「Z世代のリアル」を、麻布競馬場は驚異の解像度で詳らかに。
20代からは「共感しすぎて悶絶した」の声があがる一方で、
部下への接し方に持ち悩みの尽きない方々からは「最強のZ世代の取扱説明書だ!」とも。
「あまりにリアル! あまりに面白い!」と、熱狂者続出中の問題作。
APPLE BOOKSのレビュー
第171回(2024年上半期)直木賞候補作 - SNSを中心に“タワマン文学”ブームを生み出した覆面小説家、麻布競馬場の2作目にして第171回直木賞候補作。デビュー作『この部屋から東京タワーは永遠に見えない』は、1991年生まれの筆者と同じミレニアル世代の物語だったが、今作の主人公はZ世代の若者たち。令和を迎え、社会へ踏み出していった彼らの“働き方”を切り口に、Z世代のリアルな実像を描き出している。本作の主人公たちは、大学の意識の高いサークルや、社会正義を内在させた仲間が集うシェアハウス、働き方改革が叫ばれるメガベンチャーで、常に賢く、正しくあることを自らに課しているタイプの若者だ。そんな彼らの前に、一人さめている謎の若者、沼田くんが現れる。何かを成し遂げたい、特別な何者かになりたいともがく彼らを沼田くんはあざ笑い、その価値観に冷や水を浴びせる。“何か”というぼんやりした高みを目指すZ世代の人生ゲームに、確かな勝者や敗者は存在しない。そんな不毛なゲームに身を置く彼らの薄ぼんやりとした閉塞(へいそく)感を見事に描き出した作品。筆者の一つ下の世代の物語だからこそ、世の中を俯瞰(ふかん)する視点がさえている。読者の世代によって、さまざまな読後感を生むだろう。