君の知らない10年
消えることでしか、生きられなかった。
発行者による作品情報
君の知らない十年
――消えることでしか、生きられなかった。
三十歳の誕生日、編集者の高橋悠真のもとに、差出人も消印もない一通の手紙が届く。
その筆跡は――十年前、事故で亡くなったはずの少女、篠原柚希のものだった。
封を切った瞬間から、止まっていた記憶が音を立てて動き出す。
なぜ彼女は死んだことになったのか。
なぜ十年の時を越えて、手紙は届いたのか。
手紙の消印が示す、小さな港町「寄島」。
そこには、彼女が選んだ“もうひとつの生き方”の答えが隠されていた――。
名前を失い、世界から姿を消した人間が、もう一度「自分」として生き直すまでの物語。
静かな雨音と潮の匂いに包まれた、再生と再会の十年の記録。
あなたの中にも、呼び戻したい“名前”はありませんか。