夜に星を放つ
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4.1 • 9件の評価
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- ¥770
発行者による作品情報
直木賞受賞!やさしく煌めく傑作短編集
コロナ禍のさなか、閉塞感と、婚活アプリで出会った恋人との進展しない関係に悩む綾。
月に一度、綾の早世した双子の妹の恋人だった村瀬と話すことで気持ちを保っている。
重い喪失感を共有する二人が、夜空を見上げた先には――(真夜中のアボカド)
どうしようもないことに対面した時、
人は呆然と夜空を見上げる。
いつか再び、誰かと心を通わせることができるだろうか――。
5つの優しい物語が光を紡ぐ第167回直木賞受賞作。
【目次】
真夜中のアボカド
銀紙色のアンタレス
真珠星スピカ
湿りの海
星の随に
解説・カツセマサヒコ
単行本2022年5月文藝春秋刊
文庫版2025年2月文春文庫刊
この電子書籍は文春文庫版を底本としています。
APPLE BOOKSのレビュー
第167回(2022年上半期)直木賞受賞作 - 私たちはどんな時に夜空の星を眺めるのだろう。星をモチーフにまとめられた本作は、女性の生と性に向き合った、少しひりつくような作風で知られる窪美澄による短編集。各話の登場人物が喪失感、焦燥感、居場所のない不安などを抱えながら夜空を見上げる姿が描かれている。コロナ禍で婚活中の女性が持て余す閉塞(へいそく)感と揺れる心情を描いた「真夜中のアボカド」。17歳の少年のひと夏の出会いと淡い恋心、大人になることの“重力”を描いた「銀紙色のアンタレス」。いじめられている女子中学生が母親の幽霊と暮らす「真珠星スピカ」。離婚による傷がまだ癒えない男性とシングルマザーとのつかの間の交流を描いた「湿りの海」。義理の母との距離感に戸惑う少年を描いた「星の随(まにま)に」。窪美澄のこれまでの作風とは異なり、傷を負った人々をまるで夜空に浮かぶ星々のようにそっと俯瞰(ふかん)するような、はかなく優しい視線が感じられる作品となっている。今日もいろんな思いが投影され、星空が瞬いているのだな、と夜空に思いをはせたくなるような一冊だ。