大地の子(一)
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4.2 • 23件の評価
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- ¥640
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発行者による作品情報
松本勝男は、敗戦直後に祖父と母を喪い、妹と生き別れた。戦争孤児となった少年は、死線をさまよう苦難を経て、中国人教師に拾われ、中国人「陸一心」として育てられる。しかし、成人した一心を文化大革命の波が襲う。日本人の出自ゆえにリンチを受け、スパイの罪状で労働改造所送りに。終わりのない単調な重労働に明け暮れる日々、一心が思い起こすのは、養父・陸徳志の温情と、重病の自分を助けた看護婦・江月梅のことだった。NHKでドラマ化された山崎豊子の感動巨編。
APPLE BOOKSのレビュー
中国残留孤児を題材として、胡耀邦総書記の協力を得た中国での現地取材に3年を費やし、その後、完結までに5年をかけて執筆され、全4巻で刊行された山崎豊子の畢生(ひっせい)の大作の第1巻。日本人戦争孤児、陸一心(ルーイーシン)。ソ連対日参戦により、ソ満国境に近い日本人開拓村を追われ、祖父と母と赤ん坊の末妹をいちどきに失い、5歳の妹あつ子とも生き別れた彼は、小学校教諭の陸徳志に助けられ、養子となった。貧しいながらも高等教育を受け、北京鋼鉄公司に技術者として配属された一心に、苛烈な文化大革命の嵐が迫る。日本人であるがゆえに無実のスパイの罪状で労働改造所に送られ、囚人として苛酷な労働を強いられる果てしない日々。その彼の命を救ったのは、看護師の江月梅だった…。日本と中国の間で揺れる祖国への思い、終戦時に棄民となった開拓団の悲劇、文化大革命の動乱と労働改造所の恐るべき実態などを描く社会派小説であり、不屈の精神で逆境に立ち向かう男の物語だ。養父や江月梅との情愛にも心が動かされ、どこを切り取っても小説の面白さに満ちている。綿密な取材に基づき、圧倒的な筆力で描く波瀾万丈の物語の幕開け。