幽玄F
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- ¥1,800
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発行者による作品情報
少年は、空を夢見、空へ羽ばたく――空を支配するG(重力)に取り憑かれ、Fを操る航空宇宙自衛隊員・易永透。日本・タイ・バングラデシュを舞台に「護国」を問う、圧巻の直木賞受賞第一作。
APPLE BOOKSのレビュー
空に魅入られた天才パイロットの数奇な人生を描く物語。『テスカトリポカ』で第165回直木賞を受賞した佐藤究の受賞後第1作。三島由紀夫がF-104戦闘機に搭乗した超音速体験を記したエッセイ『F104』に触発され、三島の最後の長編『天人五衰(豊饒の海・第四巻)』の安永透と重なる名前の易永透を主人公に描く。両親の離婚後、祖父の営む真言宗の寺で育った易永透は、幼少期から空を飛ぶことに取りつかれ、パイロットを目指してマンガも読まずに視力維持に努めるような子どもだった。高2の9月、航空マニアの同級生、溝口に誘われ、三沢基地の航空祭を訪れた透は、米軍のF-16戦闘機の飛行を見て天命を知る。圧倒的な成績で狭き門を突破し、航空宇宙自衛隊のパイロットとなった透は天才の名を欲しいままにするが、F-35Bの操縦中に“透明で巨大な蛇”を見る異変が起きる…。その後、タイ、バングラデシュと舞台が移る急展開に驚くが、これしかないという壮絶で美しい結末と、未来を託すエピローグまで目が離せない。数々のオマージュをささげながら、三島の描いた絶対性と官能に挑み、戦闘機のように抑制したフォルムでエンターテインメントとして昇華させた前代未聞の傑作小説。