



星々の舟
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3.9 • 79件の評価
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- ¥690
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発行者による作品情報
家族だからさびしい。他人だからせつない──禁断の恋に悩む兄妹、他人の男ばかり好きになる末っ子、居場所を探す団塊世代の長兄と、いじめの過去から脱却できないその娘。厳格な父は戦争の傷痕を抱いて──平凡な家庭像を保ちながらも、突然訪れる残酷な破綻。性別、世代、価値観のちがう人間同士が、夜空の星々のようにそれぞれ瞬き、輝きながら「家」というひとつの舟に乗り、時の海を渡っていく。愛とは、家族とはなにか。03年直木賞受賞の、心ふるえる感動の物語。
APPLE BOOKSのレビュー
第129回(2003年上半期)直木賞受賞作。戦後、裸一貫で工務店を興した家長である父から2人の息子と娘、そして孫娘まで、3代にわたる水島家の歴史を、それぞれ視点の異なる6編の連作短編形式で描いた感動の物語。育ての母である志津子が倒れ、次男の暁は十数年ぶりに帰郷する。妹の沙恵との禁断の恋や、父の重之を殴り倒し実家を飛び出した日を思う暁は、志津子の葬儀で長兄の貢から意外な事実を知らされる。さらに、兄と姉とのつらさを知り、いつでも逃げられる不倫を繰り返す次女の美希、自らの魔性と不可分な兄との狂おしい恋が忘れられない沙恵、と各話ごとに視点が移り、互いの知らない思いが交錯するが、第3話までは暁と沙恵の叶わぬ恋が主眼。ところが、それまで背景にいた人物の視点で語られる第4話と第5話を経て、頑固で気難しい父、重之の戦争体験を描く第6話に至ると、小説の印象ががらりと変わり、最後まで胸の内が語られない母、志津子の存在感が増す。この構成の巧みさには、舌を巻かざるを得ない。一人一人の人生が星のように浮かび、家族という舟に引かれてゆるやかに流れていく。一編一編が珠玉の短編であり、6編が合わさると家族の歴史をつづる大河小説となる傑作。
カスタマーレビュー
私の人生を変えた本
『星々の舟』は、私の物事の考え方、しいては人生観に大きな影響を与えた本と言っても過言ではありません。
人々の複雑な感情、社会問題など、この作品の中でさまざまな問題提起がされていますし、現代人の生き方そのものを考えるきっかけになります。翼とともに、村山由佳さんの作品の中では好きな作品で、3年に一度は読んでいますが、読む度に、新たな発見があります。