架空の犬と嘘をつく猫
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4.6 • 5件の評価
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- ¥720
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発行者による作品情報
空想の世界に生きる母、愛人の元に逃げる父、その全てに反発する姉、そして思い付きで動く適当な祖父と比較的まともな祖母。そんな家の長男として生まれた山吹は、幼い頃から皆に合わせて成長してきた。だけど大人になり彼らの《嘘》がほどかれたとき、本当の家族の姿が見えてきて――?
これは破綻した嘘をつき続けた家族の、とある素敵な物語!
APPLE BOOKSのレビュー
複雑な問題を抱えた家族の中で育った主人公の30年に及ぶ軌跡をつづる『架空の犬と嘘をつく猫』。夢見がちな祖父、嘘を売っているけれど家族で一番まともな祖母、浮気をしている父、亡くなった弟が生きていると信じ心がここにない母、そしてそんな家族を嫌う姉。母の世界を守るため優しい嘘をつくことで、不安と諦めの中で自分を守っていた子ども時代の羽猫山吹は、自分に寄り添ってくれる架空の犬を心の中で飼いながら日々の気持ちを紛らわせていた。山吹の小学生時代から大人になるまでの経過を七つの季節で切り取り、丁寧に紡いだこの作品から、さまざまな立場の人々の人生模様が浮かび上がる。子どもの頃は与えられた環境の中で生きるしかない。大人たちの自分勝手さを許すことはできないし、そこでの気持ちは解決も理解もできないかもしれないけれど、生き延びて大人になった先の未来は悪くはないかもしれない。文体の温かさとかわいらしい装丁からファンタジーのような物語なのかと読み始めるといい意味で裏切られ、読後はほんのりとした温かさが残る。2025年に映画化が決定。