汝、星のごと‪く‬

APPLE BOOKSのレビュー

瀬戸内の島で出会った男女の淡い恋と別れ、そして15年後の再会を描いた珠玉のラブストーリー。島で育った高校生の暁海（あきみ）と、島に転校してきた櫂（かい）。それぞれに家庭の悩みを抱えていた2人は、気持ちを通じ合わせる。しかし、子どもにはどうにもできない環境の中で彼らはすれ違い、別れの時が訪れるのだった。2022年に実写映画化され話題を呼んだ『流浪の月』の著者、凪良ゆうによる約2年ぶりの長編小説。2人の主人公が直面するのは、毒親、ヤングケアラー、地方都市の閉塞（へいそく）感、ジェンダーやセクシュアリティの不平等、といった極めて今日的な問題の数々だ。それは平成から令和へ、現代日本を生きてきた若者世代にとって容易に自己投影しうるテーマだろう。正統派のラブストーリーには違いない。しかし暁海と櫂の抱える葛藤は、彼らの恋愛関係を超えて読者の胸元に迫りくる普遍性を持っている。主人公たちの心情に柔らかく寄り添いながらも、クライマックスに向けて熱を帯びていく凪良のストーリーテリングが素晴らしい。自分の人生を自分らしく生きたい。たとえ間違っていたとしても、自分で人生を選びたい。そんな切実な願いを、読者は改めて自身に託したくなるだろう。