滝山コミューン一九七四
-
-
3.3 • 7件の評価
-
-
- ¥770
-
- ¥770
発行者による作品情報
郊外の団地の小学校を舞台に、自由で民主的な教育を目指す試みがあった。しかし、ひとりの少年が抱いた違和感の正体は何なのか。「班競争」「代表児童委員会」「林間学校」、逃げ場のない息苦しさが少年を追いつめる。30年の時を経て矛盾と欺瞞の真実を問う渾身のドキュメンタリー。(講談社文庫)
APPLE BOOKSのレビュー
日本の政治思想について長年研究を続ける原武史が、小学校で行われた集団教育の実態を記録した「滝山コミューン一九七四」。1970年代の初め、東京郊外・東久留米市の滝山団地内にある生徒数1500人以上のマンモス小学校で実際に行われた"学級集団づくり"の問題点を、実際に同校に生徒として通学していた著者の目を通じて生々しく描き出す。一人の少年から見た、自主的で民主的なコミュニティーを育てようという試みがやがて仲間への糾弾や相互監視を生み出し、当初のもくろみが崩壊していく過程は迫力に満ち、身につまされる。同時に著者の綿密な資料調査によって判明した"学級集団づくり"の全貌や当時の社会状況、政治の動きなど、時代背景に関する解説が本文中に逐一挟み込まれ、全体を俯瞰しながら本書の内容について理解を深めることができる。全体主義の恐ろしさを描いたジョージ・オーウェルの「一九八四年」をほうふつとさせる事例であり、現代社会でも問題となっている"監視社会"について考える上でも大いに参考となる一冊。