現代語訳 論語と算‪盤‬

APPLE BOOKSのレビュー

新1万円札の肖像にも選ばれた明治の実業家、渋沢栄一による不朽の名作。人間の生き方や道徳観を説く『論語』と、冷徹な経済の世界を象徴する『算盤』。本来は相反する世界を接合し、単に利益を追求するだけでなく、社会に還元する経営者としての理念と哲学がつづられる。渋沢が設立に関与した500近い企業や団体は、銀行からビール会社まで、現在まで残り、国民の生活に欠かせないものが少なくない。さらに、学校や病院など人材育成や福祉にも目を向けている。幅広い視野と先見性と実行力を兼ね備えながら、つつましい暮らしを貫いた渋沢の、根本となる思想が込められている。NHK大河ドラマの主人公に選ばれて以降『論語と算盤』が見直され、復刻版や解説書なども数多い。そんな中、難しい論語の記述をより分かりやすく、現代語に翻訳した本書は、渋沢の提唱した日本型資本主義を知る最適の入門書といえる。経営者の必読書であることはもちろん、日本人の芯を学ぶことができる人生の指南書でもある。