食の歴史――人類はこれまで何を食べてきたのか
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3.8 • 10件の評価
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発行者による作品情報
【内容紹介】
「人類の幸福の源は、食にある」とジャック・アタリ氏はいいます。
衣食住は、昔から人の生活に欠かせない3要素です。地球の誕生から過去、現在、未来に至るまで、人類はどのように食べるという行為と関わってきたのか。アタリ氏は、これらを綿密な資料から分析します。
特に食には、生命を維持する以上の役割があり、政治・経済・文化・産業・性・哲学・環境・芸術などあらゆることが結びついてきました歴史があると指摘するのです。
たとえば、イタリアやフランスは食文化の宝庫であり、フランス王ルイ14世などは料理を戦略的な外交の手段として活用してきました。また、高級ホテルや加工食品の歴史も食なしには語ることができません。
同時に現在のアメリカの繁栄にも食が大きく関連しています。コーンフレークやファストフードは、いかに人を効率よく働かせるかという目的で作られたものです。これら栄養学がアメリカの国家戦略に強く影響しています。
富裕層は何を食べているのかといった世俗的な話題から貧困層の食事は何か、世界の飢餓はどうして起こるのかなど、世界的な課題に関しても鋭い分析は留まりません。
2050年に世界の人口が50億に達し、AI社会が到来しているとすれば、人類は何を食べていくのか。アタリ氏は、昆虫食に関する未来も予言するのです。
実は、アタリ氏は自称健康オタクで、食べる物に関して最大限の注意を払っています。現在、78歳にして輝かしい知性を放ち続けるために必要な巻末の「食の科学的基礎知識」は必読です。
【著者紹介】
[著]ジャック・アタリ(Jacques Attali)
1943年アルジェリア生まれ。フランス国立行政学院(ENA)卒業、81年フランソワ・ミッテラン大統領顧問、91年欧州復興開発銀行の初代総裁などの、要職を歴任。政治・経済・文化に精通することから、ソ連の崩壊、金融危機の勃発やテロの脅威などを予測し、2016年の米大統領選挙におけるトランプの勝利など的中させた。林昌宏氏の翻訳で、『2030年ジャック・アタリの未来予測』(小社刊)、『新世界秩序』『21世紀の歴史』、『金融危機後の世界』、『国家債務危機─ソブリン・クライシスに、いかに対処すべきか?』、『危機とサバイバルー21世紀を生き抜くための〈7つの原則〉』(いずれも作品社)、『アタリの文明論講義:未来は予測できるか』(筑摩書房)など、著書は多数ある。
[翻訳]林 昌宏(はやし・まさひろ)
1965年名古屋市生まれ。翻訳家。
立命館大学経済学部卒業。訳書にジャック・アタリ『2030年ジャック・アタリの未来予測』『海の歴史』(小社刊)、『21世紀の歴史』、ダニエル・コーエン『経済と人類の1万年史から、21世紀世界を考える』、ボリス・シリュルニク『憎むのでもなく、許すのでもなく』他多数。
【目次抜粋】
はじめに
第一章さまよい歩きながら暮らす
第二章 自然を食らうために自然を手なずける
第三章 ヨーロッパの食文化の誕生と栄光(一世紀から一七世紀中ごろまで)
第四章 フランスの食の栄光と飢饉(一七世紀中ごろから一八世紀まで)
第五章 超高級ホテルの美食術と加工食品(一九世紀)
第六章 食産業を支える栄養学(二〇世紀)
第七章 富裕層、貧困層、世界の飢餓(現在)
第八章 昆虫、ロボット、人間(三〇年後の世界)
第九章 監視された沈黙のなかでの個食
第十章 食べることは重要なのか
付属文書 食の科学的な基礎知識
謝辞
訳者あとがき
APPLE BOOKSのレビュー
1981年のミッテラン大統領顧問就任以降、欧州復興開発銀行初代総裁など要職を歴任し、サルコジ、オランド、マクロン大統領にまで影響を及ぼしたフランスの知の巨人、ジャック・アタリによる食の文化史にして近未来へのシグナル。食は歴史の中核に位置する重要な人間活動と述べる著者は、太古のアフリカ大陸を移動する猿人から現代人に至るまで、人類の食生活の変遷を博覧強記な知識で分析する。食べる欲求が火の利用や言語の使用を促し、狩猟技術を発展させ、食糧の生産が定住化へ導いた。食は宗教や武器や性と結びつき、食を巡って人々の社会構造が出来上がる。豊かな食文化がヨーロッパに栄光をもたらし、世界人口の増加に伴う食の工業化がアメリカの繁栄につながった。畜産と環境破壊の関係をはじめ、豊富なデータを示す著者が予測する30年後の未来像は現実味がある。家族で食卓を囲む機会が減り、孤独感を砂糖という麻薬で癒す個食が加速することを危惧する一方、健全な食生活を送る=地球を保全するための利他主義に基づく提言も説得力がある。欧州を代表する知の巨人が描く、食を通じて見えてくる人類の歴史とその未来。