光と影
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4.3 • 3件の評価
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- ¥470
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発行者による作品情報
将来を嘱望された陸軍大尉の小武は右腕負傷の憂き目にあう。偶然にも同じ傷で同期の寺内と病院で一緒になるが、小武は切断、寺内は腕を残した施術となった。廃兵となった小武はしだいに転落の気分を味わうが、いっぽうの寺内は……。カルテの順番という小さな偶然がわけた人生の光と影を、的確なタッチで構築した直木賞受賞作に、人間の皮肉を巧みに描き出した「宣告」「猿の抵抗」、若く美しい女に潜む戦慄をあつかった「薔薇連想」の三篇を加えた卓抜な作品集。
APPLE BOOKSのレビュー
第63回(1970年上半期)直木賞受賞作。『失楽園』『愛の流刑地』といった恋愛小説で社会現象を巻き起こした渡辺淳一は、森鴎外、斎藤茂吉らと同様に、医者から作家へと転身した、あるいは二足のわらじを履いた一人でもある。それだけに医療現場を舞台とした作品も多く、本作はそうした初期の医療文学を集めた作品集だ。『光と影』は直木賞に輝いた表題作。西南戦争で受傷し腕を粉砕骨折した、小武と寺内の二人の陸軍大尉。ともに腕を一本失うことを覚悟したものの、なぜか寺内は腕を切断されなかった。その後、小武は腕があるという理由だけで寺内が出世したと感じ、うっ屈した思いを抱えるようになるが…。2枚のカルテがその後の二人の明暗を決定づける、小説ならではの巧緻な構成と見事な心理描写により、まさしく人生の光と影を捉えた傑作だ。他に「宣告」「猿の抵抗」「薔薇連想」を併録。いずれも生と死のはざまにある病に侵された人々の姿を、医者という経歴を生かしたゆるみない筆致で描いている。異色作は、梅毒をうつされた女性が主人公の「薔薇連想」。血を共有したいと感じる主人公への嫌悪と共感がない交ぜになる、サイコホラーのごとき一編だ。