日々のこと
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- ¥430
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発行者による作品情報
ウェイトレス時代の店長一家のこと。ロンドンに旅立つ前のいとこと行った憧れの「お風呂の国」。恋人と行ってひどい目にあった京都の宿。女ばっかり3人の香港旅行。電気屋さんに聞かされた友人の結婚話……。強大な「愛」のようなものがまわりにあふれかえっていた20代。人を愛するように、日々を大切に想って描いた名エッセイ。
APPLE BOOKSのレビュー
「キッチン」でデビューして以来、ベストセラーを生み続ける吉本ばななの初期のエッセイ集「日々のこと」。1988年冬から1991年春にかけて、著者が20代の日々の中で見聞きしたことをときにユーモラスに、ときに辛口につづる。まるで読み手に話し掛けるかのようなテンポのよい文体はとても親しみやすく、読み手にページをめくる手を止めさせない。映画の感想や犬との暮らしぶり、飲食店や温泉旅館の訪問録などさまざまに話題が展開し、次はどんな話が出てくるのかと期待しながら読み進めるのも楽しい。家族や友人なども登場し、彼らと過ごす日常の飾らない姿も垣間見える。著者の人間観察力の鋭さや感受性の豊かさ、感じたことを言葉にする表現力などを感じ取れるのも、エッセイならではの魅力。巻末に添えられた文庫版あとがきには本書の文章への反省や、当時の状況の振り返りなどが収録されており、著者自身の成長も感じることができる貴重な一冊となっている。