蛇行する月
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- ¥480
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発行者による作品情報
「東京に逃げることにしたの」。高校を卒業してまもなく、同級生だった順子から清美に連絡が入る。二十も年上の男と駆け落ちするという。故郷を捨て、極貧の生活を「幸せ」と言う順子に、それぞれ苦悩や孤独を抱えた女たちは引き寄せられていく――。自分らしく生きてゆくことの難しさ、そこにある確かな希望を描いた連作長編。
APPLE BOOKSのレビュー
「ホテルローヤル」で直木賞を受賞、北海道を舞台に女性の情愛や悲哀を描くことを得意とする作家・桜木紫乃の長編小説「蛇行する月」。高校卒業後まもなく、妻のいる20歳年上の男性と故郷を捨て駆け落ちした主人公、須賀順子。その生きざまが、高校時代に仲の良かった友人を中心に、さまざまな事情を抱えた6人の女性の視点から語られる。それぞれに、転職、不倫、結婚、孤独、老いなど、ままならない人生の辛さを経験していく女性たちのストーリーから、25年に渡る順子の"幸せ"な半生が浮かび上がる巧みな構成。波瀾万丈で不器用ではあるが、見栄や虚栄心を捨て、覚悟を持って真っすぐに生きる順子。彼女の言う"幸せ"に引き寄せられ、重く沈んだ悲しみの漂う寒々とした北国の生活の中でも、希望を求め強く生きる女性たちの姿が胸に迫る。家族や友人からも離れ、豊かな生活や社会的な地位も求めない順子の生き方を通して、自分なりの幸せとは何かを考えさせられる。