アルスラーン戦記1王都炎‪上‬

APPLE BOOKSのレビュー

祖国を追われた王太子アルスラーンと仲間たちが奪還を誓うファンタジー『アルスラーン戦記1王都炎上』。スペースオペラの傑作『銀河英雄伝説』の田中芳樹が、14歳の王太子の成長を描きつつ、宗教対立、地政学、陰謀、文明破壊といった中世ペルシアの史実を盛り込み、全16巻の大河ファンタジーとして描いた。第1巻はアルスラーンの初陣と、パルス王国がルシタニア王国に征服される悲劇で始まる。勝利を確信する国王に、若き騎士ダリューンは敵に策略ありと忠告した。しかし、逆鱗（げきりん）に触れ、アルスラーンに仕えよと降格させられる。戦いは予想外の大敗となり、王国は滅亡寸前に。ダリューンはアルスラーンと祖国を守るため、引退した名軍師ナルサスを巻き込んで立ち上がる。本シリーズの醍醐味（だいごみ）は戦略的戦闘シーンのリアルさと、どんな苦境でもシニカルな会話を楽しめる仲間たちの絆だ。緊迫した状況を伝えるリズミカルでクールな文章にもしびれる。1巻では足手まといのアルスラーンが、2巻以降どう鍛えられていくのか。期待が高まる序章だ。