獣の奏者 I闘蛇‪編‬

APPLE BOOKSのレビュー

異世界の地“リョザ神王国”を舞台に、少女エリンの冒険を壮大なスケールで描き出したファンタジー巨編。『獣の奏者 I 闘蛇編』は、そのすべての始まりの物語だ。戦闘用の獣“闘蛇”を死なせた罪により母が処刑され、天涯孤独の身となった少女エリン。蜂飼いのジョウンに助けられ、彼と暮らす中で出会った天空をかける王獣に魅了された彼女は、母と同じ“獣ノ医術師”になることを決意する。過酷な運命に翻弄（ほんろう）されながらも、ひたむきに生きるエリンの未来に待ち受けるものとは…。大胆に飛躍する想像力と、リアルに描かれた世界観が見事に両立した、ファンタジーの理想形がここに結実している。人と獣が濃密に関わり合う異世界へ、一人の冒険者として入り込んでいくような胸躍る感覚を読者にもたらしてくれる。作者は児童文学のノーベル賞といわれる国際アンデルセン賞作家賞を受賞し、世界的に注目を集める上橋菜穂子。本作は児童文学、SF、ファンタジーの作家であり、文化人類学者でもある上橋の真骨頂であり、『守り人シリーズ』と並ぶ代表作となった。