不安な童話
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- ¥690
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発行者による作品情報
「あなたは母の生まれ変わりです」大学教授秘書の古橋万由子は、二十五年前に変死した天才画家高槻倫子の遺子にそう告げられた。発端は彼女の遺作展会場で、万由子が強烈な既視感に襲われ、「鋏が…」と叫んで失神したことだった。実は、倫子は鋏で首を刺されて殺されたのだ。万由子は本当に倫子の記憶を持つのか?真相を探る彼女に、奇怪な事件が襲いかかる!
APPLE BOOKSのレビュー
映像化もされたデビュー作「六番目の小夜子」や「夜のピクニック」、直木賞受賞作「蜜蜂と遠雷」などで幅広い層の読者から支持される作家、恩田陸の初期作品「不安な童話」。変死した女性画家の遺作展会場で失神したことを発端に主人公・万由子が、上司の泰山、遺された息子で万由子を「母親の生まれ変わり」と信じる秒と共に事件の真相を探る。突然万由子の頭の中に入り込んでくる鮮明なイメージ、身の回りで起こる奇妙な事件の数々など、物語は全体に不穏な雰囲気を漂わせながら語られ、終盤では意外な展開を見せる。ストーリーに大きな影響を与えない登場人物たちの心の機微すらも丁寧に拾い上げられ、物語の中に差し込まれている。恩田陸ならではの描写力が随所に光る作品。