原爆供養塔 忘れられた遺骨の70年
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- ¥950
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発行者による作品情報
広島平和記念公園の片隅に、土饅頭と呼ばれる原爆供養塔がある。かつて、いつも黒い服を着て清掃する「ヒロシマの大母さん」と呼ばれる佐伯敏子の姿があった。なぜ、佐伯は供養塔の守り人となったのか。また、供養塔にまつられている被爆者の遺骨は名前や住所が判明していながら、なぜ無縁仏なのか。「知ってしまった人間として、知らんふりはできんのよ」佐伯敏子の言葉を胸に取材を丹念に重ねるうちに、埋もれていた重大な新事実が判明していく──。引き取り手なき遺骨の謎を追う、もう一つのヒロシマの物語。
第47回(2016年)大宅壮一ノンフィクション賞、第15回早稲田ジャーナリズム大賞受賞作がついに文庫化!
解説・平松洋子
APPLE BOOKSのレビュー
2016年に大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した堀川惠子による「原爆供養塔 忘れられた遺骨の70年」。被爆者の遺骨が収容された原爆供養塔で、引き取り手のない遺骨を遺族の元へ返す作業を続けてきた佐伯敏子。彼女の活動や自身の被爆した経験、これまで過ごしてきた人生を中心に、国や行政の対応、被爆者への偏見など、広島での原爆被害の真実がつづられる。病に倒れた佐伯の代わりに、遺骨の行方を探し始めた著者は、引き取り手の捜索を巡り、死者一人ひとりの人生にも寄り添う。真実を見つめる冷静な描写が、戦争の残した傷跡の大きさを浮き彫りにし、心に力強く訴えかけてくる。取材が進むにつれ、現場で遺骨の焼却や名簿作りに当たった元少年特攻兵の話など、さらに踏み込んだ事実にもたどり着き、これまで多くのドキュメンタリー番組の制作に携わり、ジャーナリストとして数々のノンフィクション作品を手掛けてきた著者の丹念な取材力がさえわたる。想像を超える被害に直面した広島の過去に思いをはせるきっかけとなる一冊。