喫茶おじさん
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3.9 • 10件の評価
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- ¥1,500
発行者による作品情報
人生もコーヒーも、苦いけれどうまい。
松尾純一郎、バツイチ、57歳。大手ゼネコンを早期退職し、現在無職。妻子はあるが、大学二年生の娘・亜里砂が暮らすアパートへ妻の亜希子が移り住んで約半年、現在は別居中だ。再就職のあてはないし、これといった趣味もない。ふらりと入った喫茶店で、コーヒーとタマゴサンドを味わい、せっかくだからもう一軒と歩きながら思いついた。趣味は「喫茶店、それも純喫茶巡り」にしよう。東銀座、新橋、学芸大学、アメ横、渋谷、池袋、京都──「おいしいなあ」「この味、この味」コーヒーとその店の看板の味を楽しみながら各地を巡る純一郎だが、苦い過去を抱えていた。妻の反対を押し切り、退職金を使って始めた喫茶店を半年で潰していたのだ。仕事、老後、家族関係……。たくさんの問題を抱えながら、今日も純一郎は純喫茶を訪ねる。
『三千円の使いかた』で大ブレイクの著者が描く、グルメ×老後×働き方!
APPLE BOOKSのレビュー
バブル世代の57歳、2度目の離婚目前、職は無し。そんな困ったおじさんが、趣味と決めた喫茶店巡りと共に、これまでの自分を振り返る、人生再巡礼の物語。松尾純一郎はある日思った。男の人生とは、理想的な喫茶店を探す旅ではないか。1年半前、早期退職に手を挙げて大手ゼネコンを辞め、退職金を元手に妻、亜希子の反対を押し切って喫茶店を始めるも、半年で閉店させた。社内不倫の末、30歳の時に前妻、登美子と別れて再婚した過去もあり、愛想を尽かした亜希子は、一人暮らしをする大学生の娘・亜里砂の元に半年前から身を寄せ、別居中。学生時代の友人、宮沢が紹介してくれる再就職にも気が乗らない。東銀座、新橋、学芸大学、アメ横、渋谷、池袋、果ては京都に至るまで、各地の純喫茶店を1年かけて毎月巡る純一郎に、妻も娘も同期の友も、喫茶店経営時代のバイト君までもが「何も分かってない」と一口同音に言う。無自覚な純一郎に、大切な「何か」が分かる日は来るのか。店の名前を出さずとも、調べて行ってみたくなる、純喫茶名店のコーヒーや看板メニューの数々。読者の食欲を刺激するガイドブックであると同時に、家族や老後や生き方を優しく指南してくれる好著。