小さいおうち
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3.7 • 81件の評価
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- ¥800
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発行者による作品情報
昭和6年、若く美しい時子奥様との出会いが長年の奉公のなかでも特に忘れがたい日々の始まりだった。女中という職業に誇りをもち、思い出をノートに綴る老女、タキ。モダンな風物や戦争に向かう世相をよそに続く穏やかな家庭生活、そこに秘められた奥様の切ない恋。そして物語は意外な形で現代へと継がれ……。最終章で浮かび上がるタキの秘密の想いに胸を熱くせずにおれない、上質の恋愛小説。第143回直木賞受賞作。山田洋次監督で映画化。
APPLE BOOKSのレビュー
第143回(2010年上半期)直木賞受賞作。「わたし」にとって「家」といえば、奥様とぼっちゃんのいる、高台の赤屋根の家だった。山形の尋常小学校を卒業し、東京へと奉公に上がったタキは、やがてこぢんまりとしたサラリーマン家庭である平井家のお手伝いとなる。お嬢様とでも呼びたくなるほど若々しく美しい奥様の時子は、熱心に働き「ある種の頭の良さ」を持つタキをかわいがる。程なくして旦那様が建てた赤い瓦屋根の洋館、その中にある2畳の部屋をついのすみかと心に決めたタキも奉公に精を出すが、ある出来事がきっかけで奥様の密やかな恋に気付いてしまう。タキが晩年に記した回顧録を中心に物語は進行していくが、タキが描く昭和初期はモダンで活気に満ちており、戦争が始まった昭和16年でさえどこかのんきで楽しげだ。ごたつく世相の中でも平和に過ごしていた一般市民の暮らしぶりと、思いの外明るかった時代の空気感をお手伝いの目線から描いたほのぼの物語かと思いきや、タキの大甥である健史が導くラストで物語の様相が変わる。奥様の恋の行方、タキの秘密、そして戦争がもたらしたもの。胸にさまざまな余韻を残す、出色の物語だ。
カスタマーレビュー
ちいさいおうち
松たかこが主演する映画なので彼女を思い浮かべながら読みました、心に残る作品、肉親以上の絆を時子とタキに感じました、ノンフィクションで最後、時子を密かに愛した彼が、彼なりの描写で時子とタキを描きあげていたところにジーンときました。