幸腹な百貨店
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- ¥730
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発行者による作品情報
食べて、働いて、みんなで笑おう――。バブル部長VS.若手社員。老舗デパート再生なるか? 中部事業部長となった高橋伝治は、以前店長をしていた堀内百貨店が閉店の危機にあることを知る。古巣のピンチに自ら乗り込んだ伝治だが、何でも「気合い」で乗り切ってきたバブル部長を若手店員たちは煙たがる。伝治は彼らと旨いお店で腹を割りつつ、お祭り復興に取り組む地元店主たちとも知り合って……。
APPLE BOOKSのレビュー
客足が途絶えた地方都市のデパートの奮闘に元気がもらえる『幸腹な百貨店』。『ひとり旅日和』など料理の描写に定評のある秋川滝美が、地方経済の衰退を食い止めようと動き出す人々の姿をほっこりと描く。中部地方の老舗だった堀内百貨店は業績悪化で大手に吸収合併され、今では本店を残すだけ。消費者は便利で安くて何でもそろうショッピングモールに車で出掛け、百貨店と周辺の商店街は風前のともしびだった。そこにバブル時代を知るイケイケの元店長、伝治が現れる。彼は町に伝わる「ふるみなと祭り」を軸に閉店を回避しようと張り切るが、気合いと情熱は空回りするばかり。伝治が覇気のない若手社員にイライラする光景に思わず共感する人もいるだろう。小料理屋できれいに魚をいただくグルメの伝治に部下が感動するシーンで、視点は一変する。一緒に食事すると見えてくることがあると伝える作者の温かな視線がうれしい。おいしい食事とうまい酒は、世代を超えて心をつないでくれるのだ。