



推し、燃ゆ
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3.9 • 39件の評価
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- ¥630
発行者による作品情報
推しが燃えた。ファンを殴ったらしい――。第164回芥川賞受賞、世代も国境も超えた大ベストセラー、待望の文庫化! 解説=金原ひとみ
APPLE BOOKSのレビュー
デビュー作『かか』で三島由紀夫賞を受賞した21歳の気鋭の作家が、今どきの少女たちの寄る辺なきアイデンティティを細やかなタッチで描き出した『推し、燃ゆ』。アイドルやアニメのキャラクター、スポーツ選手から声優までジャンルを問わず、熱狂的なファンは応援することを「推す」と称し、応援する特定の対象を「推し」と呼ぶ。そんなスラングが根付いて久しいが、本作の主人公あかりもアイドルの上野真幸を熱心に推している一人だ。学校にも家庭にもなじめず、社会不適合のレッテルを貼られた彼女は、日々の生きづらさから逃れるように「推しを推す」行為にのめり込んでいく。しかしある日、彼女の推しはファンを殴ったことで炎上してしまうのだった。お金、時間、労力を惜しみなくつぎ込み、推しに依存を深めていくあかりの生活は破綻寸前だ。でも、それを不毛な一方通行の行為であるとは言い切れないほど、彼女の常軌を逸した推しへの思念は数少ない確かなものを人生にもたらすエネルギーとなっている。推しの炎上によって大きく揺さぶられながらも、それはあかりにとって「生きる」ことに他ならないのだ。