撮ってはいけない家
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4.2 • 10件の評価
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- ¥1,900
発行者による作品情報
映像制作会社でディレクターとして働く杉田佑季は、上司であるプロデューサーの小隈好生から、ホラーモキュメンタリ―の企画を担当するように頼まれる。だが、実際にドラマの制作が始まると、子どもの神隠しが発生し……。
APPLE BOOKSのレビュー
短編集『夫の骨』の表題作が賞を受賞し注目を集めた矢樹純による、とある旧家にまつわる因縁を題材にした長編ホラー。映像制作会社のディレクターである佑季は、ホラードラマの撮影のため、山梨県へロケーションハンティングに向かう。番組を企画したのは小隈プロデューサーで、プロットは「赤夜家にはある因縁めいた言い伝えがあった。その旧家の男子は皆、12歳でなんらかの形で命を落とすか、行方不明になる」というものだった。影場所は彼の再婚相手である婚約者の紘乃の実家だが、偶然か否か、家屋からは小隈のフィクションとは思えない不吉な符合がいくつも見つかり、撮影が始まると怪現象が頻発。佑季は、現象の背後にかつて集落で起こったある事件が関わっていることを知るが…。旧家の因習とそれにまつわる陰惨な事件という設定や道具立てが効いた、『リング』以降に誕生した呪いにまつわる正統派ホラーの快作。実話怪談やモキュメンタリーの要素も取り入れた、読み進めるたびにじんわりと侵食してくるような恐怖を味わってほしい。全編にちりばめられた伏線の回収も実に見事で、謎解きのスリルも味わえる。怒涛(どとう)の展開を迎える衝撃のラストまで、ページをめくる手が止まらないだろう。