新装版 戦いすんで日が暮れて
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3.0 • 5件の評価
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発行者による作品情報
『九十歳、何がめでたい』の原点。弱気な夫と、巨額な借金を背負い込んで奮闘する妻を、独特のユーモアとペーソスで描く直木賞受賞作。ほかに『ひとりぽっちの女史」「佐倉夫人の憂愁」「結婚夜曲」などの傑作短篇7篇、新装版あとがきを収録。
APPLE BOOKSのレビュー
第61回(1969年上半期)直木賞受賞作。夫婦の、家族の、そして幾多の苦難にもめげずに戦い続けた一人の女性による物語。作者、佐藤愛子の実体験に基づいた作品であり、彼女の戦いは夫が多額の借金を背負ったことから始まる。会社は倒産し、家族の生活も激変するが、世間知らずでお人好しの夫はどこまでも頼りない。そんな夫への怒りを力に変え、借金取りには啖呵を切り、がむしゃらに前に進み続ける妻の姿が痛快だ。時には、こらえきれず愚痴や暴言も飛び出すものの、彼女は常にカラッと乾いたユーモアを失わない。はたから見れば辛苦に満ちた人生には違いないが、渦中の彼女は不思議とポジティブなエネルギーを放っていることも、本作の爽快な読後感につながっている。90歳を超えてなお小説、随筆を書き続けた佐藤のパワーの源を垣間見るような一作。いまだ男尊女卑が根深くあった1960年代に、“強い女性”の姿にこれほどリアルな血を通わせた本作が書かれたことも特筆に値するだろう。そんな表題作に加え、『ひとりぽっちの女史』『佐倉夫人の憂愁』『結婚夜曲』他7篇の短編も収録。