旅のラゴス(新潮文庫)
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4.3 • 81件の評価
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- ¥650
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発行者による作品情報
北から南へ、そして南から北へ。突然高度な文明を失った代償として、人びとが超能力を獲得しだした「この世界」で、ひたすら旅を続ける男ラゴス。集団転移、壁抜けなどの体験を繰り返し、二度も奴隷の身に落とされながら、生涯をかけて旅をするラゴスの目的は何か? 異空間と異時間がクロスする不思議な物語世界に人間の一生と文明の消長をかっちりと構築した爽快な連作長編。
カスタマーレビュー
CHELIBY
、
学者冥利の旅
あのスタジオジブリが筒井氏にアニメ化を打診し断られた、という「デマ」が流れたせいで想定外のヒットとなったという本作。世界観を一言で言うと「超能力クレイジージャーニーat異世界」といったところか?
19世紀初頭くらいを彷彿とさせる文化と人々。筒井作品には珍しく、比較的穏やかな性格の主人公ラゴスが旅をする物語。
内容を知らずに読み始めると、序盤から「転移」という単語が唐突に出てきて驚かされる。主人公を含めた登場人物の多くがさまざまな超能力の持ち主、という興味深い設定に、一気に引き込まれ最後まで夢中で読んだ。
旅の中で出会う超能力者たちの力の描写はある種の生活感を伴っていて、とてもさりげない。
主人公の素性、旅の目的、人々が超能力を得るに至った要因は、物語後半でだんだん分かってくるようになっている。
また、彼らの全てが主人公の役に立つわけではない点も面白い。中には能力のせいで自分と他人を傷つける者も。
さまざまな人々との交流から、ラゴスという人物の大きな魅力が静かに伝わってくる。何故かとても胸が熱くなるラストの数ページを、何度も読み返してしまった程だ。