



タイタンの妖女
-
-
4.5 • 28件の評価
-
-
- ¥1,000
発行者による作品情報
時空を超えたあらゆる時と場所に波動現象として存在する、ウィンストン・ナイルズ・ラムファードは、神のような力を使って、さまざまな計画を実行し、人類を導いていた。その計画で操られる最大の受難者が、全米一の大富豪マラカイ・コンスタントだった。富も記憶も奪われ、地球から火星、水星へと太陽系を流浪させられるコンスタントの行く末と、人類の究極の運命とは? 巨匠がシニカルかつユーモラスに描いた感動作。
APPLE BOOKSのレビュー
20世紀アメリカでもっとも影響力のある作家といわれる現代アメリカ文学作家の一人、カート・ヴォネガット・ジュニアが1959年に発表した「タイタンの妖女」。人類の運命を痛烈な皮肉と巧まざるユーモアと穏やかな愛情で描いた長編第2作であり、初期の傑作である。宇宙空間で"時間等曲率漏斗"という特殊な状況に飛び込んだウィンストン・ナイルズ・ラムファードは、惑星間や時空を超えた波動現象として存在するようになり、過去と未来を見通す神のごとき全能者となる。一方、火星と地球の戦争により人類を導くラムファードの予言に利用された大富豪のマラカイ・コンスタントは富と記憶を失い、地球から火星、水星をさまよったあげく、土星の衛星、タイタンにたどり着く。そこで明かされる人類の営為の目的とは一体何なのか。フランクリン・ルーズベルト大統領を暗喩するラムファードの人物像や、AIが活躍する時代への先見性のある洞察には驚くばかりだが、それでいて友情の描き方はノスタルジックといえるほどのぬくもりを感じさせる。戦争、宗教、自由意志といった大きなテーマを、同時多発的な複雑なストーリー展開で見事に描く奇想SF。