格闘する者に○
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- ¥530
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発行者による作品情報
これからどうやって生きていこう? マイペースに過ごす女子大生可南子にしのびよる苛酷な就職戦線。漫画大好き→漫画雑誌の編集者になれたら……。いざ、活動を始めてみると思いもよらぬ世間の荒波が次々と襲いかかってくる。連戦連敗、いまだ内定ゼロ。呑気な友人たち、ワケありの家族、年の離れた書道家との恋。格闘する青春の日々を妄想力全開で描きます。直木賞受賞作家の才気あふれる小説デビュー作。(解説・重松清)
APPLE BOOKSのレビュー
三浦しをんのデビュー作であり、就職活動中だった頃の自分を自己投影したともいえる自叙伝的小説『格闘する者に○』。主人公の藤崎加南子は、いよいよ就職活動に臨む大学3年生。ピリピリとした同級生のムードとは裏腹に、のんびりした彼女はどうにも100パーセントの力でコミットできない。そんな加南子がいくつもの失敗や挫折を経験しながらも凸凹した就活ロードを進んでいく、明るく、たくましく、そしてユーモラスな姿が本作の大きな魅力だ。著者もまた、加南子のように出版社を中心に就活し、全滅したという経歴の持ち主。1990年代の就職氷河期に大学生だった三浦の実体験をベースにしているため、就活のエントリーがネットではなく郵送だったりと時代の違いを感じるものの、世の就活の大半がつらく、理不尽で、心が折れそうになるものであることは加南子の時代も今も変わりはない。今まさに壁にぶち当たっている就活生も、いまだに面接のトラウマがうずくという社会人も、本作を読めばきっと、最後まで自分らしさを忘れずイージーゴーイングな加南子のマイウェイぶりに励まされるはずだ。