死んだ山田と教室
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4.4 • 8件の評価
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- ¥1,400
発行者による作品情報
自分はなぜ生きているのか、自分はなぜ死なないのか、逡巡の中にいるすべての人へ。私がずっとデビューを待ち望んでいた新人の、ユーモアと青臭さと残酷さと優しさが詰め込まれた快作です。ーー金原ひとみ
夏休みが終わる直前、山田が死んだ。飲酒運転の車に轢かれたらしい。山田は勉強が出来て、面白くて、誰にでも優しい、二年E組の人気者だった。二学期初日の教室。悲しみに沈むクラスを元気づけようと担任の花浦が席替えを提案したタイミングで教室のスピーカーから山田の声が聞こえてきたーー。教室は騒然となった。山田の魂はどうやらスピーカーに憑依してしまったらしい。〈俺、二年E組が大好きなんで〉。声だけになった山田と、二Eの仲間たちの不思議な日々がはじまったーー。
歴代メフィスト賞受賞者推薦コメント
死んでも終わらない山田の青春に、ぼくらは笑い、驚き、泣く。
(第21回受賞)佐藤友哉
くだらないのに楽しい。けれど、ほろ苦くて切ない。青春とは、山田である!!
(第49回受賞)風森章羽
最強を最強と言い切れる山田こそが最強で最高。
(第53回受賞)柾木政宗
こんな角度の切り口があったのかと驚かされ、こんな結末まであるのかと震えた!
(第59回受賞)砥上裕將
自分には経験がないはずの男子校での日々が、妙な生々しさで蘇ってきました。
(第61回受賞)真下みこと
ダサくて、眩しくて、切なくて。青春の全てと感動のラストに、大満足の一作。
(第62回受賞)五十嵐律人
校舎に忘れてきた繊細な感情を拾い上げてくれるような物語でした。
(第63回受賞)潮谷 験
APPLE BOOKSのレビュー
本作で作家デビューを果たした金子玲介の『死んだ山田と教室』。くだらない会話でわちゃわちゃする男子高生の生態をテンポのいい会話文で描き、不条理な青春ストーリーを謎解きミステリーへと変化させる。3日前、クラスで人気者の山田が夏休み終了直前に交通事故でこの世を去った。まだ16歳だった。悲しみに暮れる穂木高2年E組35名の生徒たちは、新学期の教室に響く明るい声でパニックになる。なんと死んだはずの山田の魂が教室のスピーカーに憑依して、声でコミュニケーションできるようになっていたのだ。不条理な設定をすんなりと受け入れて山田との秘密の会話を楽しんでいる2Eのクラスメイトたちだが、山田はいつか消えるのだろうとうっすら感じていた。誕生日が来ても永遠の16歳でいる山田と日々成長するクラスメイトとの対比は時の残酷さを浮かび上がらせ、後半に向かうにつれ不穏な空気が漂う。山田が現世から離れられない謎は、意外な場所に伏線が張られている。生と死、そしてアイデンティティについて考えさせる読み応え十分の力作。