



spring
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4.3 • 6件の評価
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- ¥1,900
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- ¥1,900
発行者による作品情報
自らの名に無数の季節を抱く無二の舞踊家にして振付家・萬(よろず)春(はる)。少年は八歳でバレエに出会い、十五歳で海を渡った。同時代に巡り合う、踊る者 作る者 見る者 奏でる者――それぞれの情熱がぶつかりあい、交錯する中で彼の肖像が浮かび上がっていく。彼は求める。舞台の神を。憎しみと錯覚するほどに。一人の天才をめぐる傑作長編小説。 【電子書籍版には紙書籍版に収録されている「パラパラ漫画」と書き下ろし番外編二次元コードは付きません】
APPLE BOOKSのレビュー
『チョコレートコスモス』で演劇の世界を、『蜜蜂と遠雷』でピアノコンクールを舞台に、芸術に挑む若き天才を描いてきた恩田陸が、さらなる進化を遂げた軽やかなバレエ小説。8歳でバレエに出会い、15歳で海を渡った天才舞踏家/振付家の萬春(よろずはる)。彼の半生を語るのは、世界的に有名なバレエスクールで学ぶ同期のダンサーに始まり、門外漢だが才能を見抜いた文化人の叔父、幼なじみで類いまれなる個性の作曲家と来て最後は春本人に視点が移る。題名のspringとは、跳ねるバネであり、芽吹く春であり、湧き出す泉であり、主人公の名前でもあるが、それらを踏まえて語り手を変えながら全4章が見事に構成されている。「今まで書いた主人公の中で、これほど萌えたのは初めてです」と著者自身が述べるほどの魅力を持ち、さまざまな人物から圧倒的な肯定感で語られる主人公も熱いが、彼が振り付けるコンテンポラリーバレエの演目の描写もすさまじい。何しろ15作以上に及ぶ斬新かつオリジナルのバレエ作品を著者自身が創り出しているのだ。人物像はおろかバレエそのものも言語化するという、小説として途方もない高みに到達した傑作。