人魚が逃げた
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4.6 • 21件の評価
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- ¥1,500
発行者による作品情報
本屋大賞4年連続ノミネート! 今最注目の著者が踏み出す、新たなる一歩とは——。幸福度最高値の傑作小説! 〈STORY〉ある3月の週末、SNS上で「人魚が逃げた」という言葉がトレンド入りした。どうやら「王子」と名乗る謎の青年が銀座の街をさまよい歩き、「僕の人魚が、いなくなってしまって……逃げたんだ。この場所に」と語っているらしい。彼の不可解な言動に、人々はだんだん興味を持ち始め——。そしてその「人魚騒動」の裏では、5人の男女が「人生の節目」を迎えていた。12歳年上の女性と交際中の元タレントの会社員、娘と買い物中の主婦、絵の蒐集にのめり込みすぎるあまり妻に離婚されたコレクター、文学賞の選考結果を待つ作家、高級クラブでママとして働くホステス。銀座を訪れた5人を待ち受ける意外な運命とは。そして「王子」は人魚と再会できるのか。そもそも人魚はいるのか、いないのか……。
APPLE BOOKSのレビュー
物語を愛する読者から熱い支持を受けている青山美智子の連作短編集。週末でにぎわいを見せる銀座の歩行者天国で、昼の情報番組のリポーターがヨーロッパ貴族のような格好の男性にマイクを向ける。「王子」と名乗るその男性は「僕の人魚が、いなくなってしまって……」と意味深なせりふを口にし、その発言はあっという間にSNSで拡散されていく。果たして彼の正体は。そして人魚はどこへ行ったのか。ミステリアスなエピソードから始まるこの物語は、王子がすれ違うさまざまな人々の視点から連作形式で描かれる。年上の恋人に対する思いが募り葛藤する若者。遠く旅立つ娘を複雑な気持ちで見守る母親。文学賞の選考結果の連絡を待つ作家。昼下がりの銀座であんぱんをかじりながら、またはコーヒーを飲みながら、登場人物たちは自らの人生に思いを巡らせる。そして、ばらばらの視点で語られたそれぞれのライフストーリーは、あっと驚くような結末へと収束する。なぜ作者が物語の愛好家たちから支持されているのか、最後まで見届けた読者ならきっと理解できるはずだ。