犬がいた季節
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4.7 • 7件の評価
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- ¥880
発行者による作品情報
夏の終わりのある日、高校に迷い込んだ一匹の白い子犬。生徒の名にちなんで「コーシロー」と名付けられ、その後、ともに学校生活を送ってゆく。初年度に卒業していった、ある優しい少女の面影をずっと胸に秘めながら・・・・・・。昭和から平成、そして令和へと続く時代を背景に、コーシローが見つめ続けた18歳の友情や恋、逡巡や決意をみずみずしく描く。2021年本屋大賞第3位に輝いた、世代を超えて普遍的な共感を呼ぶ青春小説。
APPLE BOOKSのレビュー
心温まる作風に定評があり、直木賞候補や数多くの文学賞受賞でも知られる伊吹有喜による連作短編集。1988年夏の終わりのある日、四日市市にある高校に迷い込んだ一匹の白い子犬。「コーシロー」と名付けられて以来、生徒たちと共に学校生活を送ることになる。昭和63年、平成3年、平成6年、平成9年、平成11年、そして令和元年。それぞれ異なる時代を背景にしながら、コーシローがずっと見つめ続けた生徒たちの物語は、当時を知る人だけでなく、世代を超えて共感できる普遍的なメッセージにあふれている。恋愛、友情、家族、将来への不安、そして自身の存在の不確かさ。高校生活は、大人になって振り返ればたった3年の出来事にしか過ぎない。しかし、通り過ぎたその時間や思い出は、その後の人生においてかけがえのない財産となる。読者はいつしか自分自身を投影しながら、かつて10代だった時代の記憶をまざまざと呼び起こすことだろう。時代を象徴する文化や流行に懐かしさを覚えつつ、久しく忘れていた青春時代のきらめきさえ、取り戻すことができるかもしれない。そして、笑い、悩み、涙したあの頃の自分と友達、恋人たちとの巡り合いに、胸を詰まらせることだろう。