発行者による作品情報
小悪魔的な女、ナオミに翻弄される謹厳実直を絵に描いたようなサラリーマン、河合譲治。カフェの女給だった美少女を妻に娶り、理想の女性へと育てるつもりが、彼女はいつしか破天荒で妖艶な女へと変貌していた。群がる男たちと放蕩の限りを尽くすナオミ。一度は家から追い出したものの、蠱惑的なナオミが忘れられない河合は、すべてを受け入れ愛欲の世界に溺れていく。文豪・谷崎潤一郎のマゾヒスティックな世界観がちりばめられた代表作のひとつ。1924(大正13)年に『大阪朝日新聞』で連載が始まり、「ナオミズム」という言葉が流行した。ナオミのモデルは谷崎の妻の妹とされ、谷崎は「一種の私小説」と断り書きを入れている。