赤目四十八瀧心中未遂
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3.9 • 18件の評価
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- ¥550
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発行者による作品情報
東京から流れつき、どこに行くあてもない「私」は日の当たらない蒸し暑いアパートの一室でモツを串に刺し続けた。向いの部屋に住む女の背中一面には、極楽の鳥、迦陵頻伽(カリョウビンガ)の刺青があった。ある日、女は私の部屋の戸を開けた。「うちを連れて逃げてッ」──。圧倒的なストーリーの巧みさと見事な文章で、底辺に住む人々の情念を描き切る。直木賞受賞で文壇を騒然とさせた話題作。寺島しのぶ主演の映画化も、日本映画大賞など数々の賞を受賞。
APPLE BOOKSのレビュー
第119回(1998年上半期)直木賞受賞作。小説を書きながら会社勤めをしていた「私」が平凡な生活を嫌い、流れ着いた尼ケ崎の街で「底辺」の世界に生きる人々との関わりを描いた『赤目四十八瀧心中未遂』。自らを私小説家と名乗る車谷長吉が圧倒的な筆致で人間の生々しい生を浮き上がらせる。「私」は東京での会社員生活から職を転々とした後、世捨て人としてアマ(尼ケ崎)のアパートで臓物を串に刺す日々を送る。焼鳥屋の女主人セイ子ねえさん、堅気ではないであろう彫り師の彫眉さん、背中に迦陵頻伽(かりょうびんが)の刺青を入れた美しい女、アヤちゃん、毎日臓物を部屋に運んでくる鋭い目のさいちゃん。「私」がどん底に落ちたとてそれは本物のどん底ではなく、しょせん傍観者であることを思い知らされる。彼らと「私」との間には深い断絶があり、それはもう世界が違うのである。物語の中に出てくる言葉一つ一つに、あえて見慣れないものを使うことで、現代の物語とは差別化された空気を持たせている秀逸さ。匂いや湿度が行間から立ち上る描写の中で、生と死が隣り合わせにある人々の情念や仄暗さがアマ(尼ケ崎)のアパートを包む。漂う空気は決して明るくはないが、なぜか読後感はすがすがしく感じる不思議さ。実写映画化もされた傑作。
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