C線上のアリア
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4.4 • 25件の評価
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- ¥1,800
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発行者による作品情報
育った家がごみ屋敷となり果て、久しぶりに戻った美佐。家を片づけていく過程で金庫を発見する。そこからひもとかれる、家族にさえ言えなかった叔母の秘密とは……。朝日新聞連載時から話題! 湊かなえが新たに挑む、先が読めない「介護ミステリ」。
APPLE BOOKSのレビュー
『告白』で衝撃的なデビューを飾り、イヤミスというジャンルを定着させた湊かなえが、介護ミステリーという新たな領域を切り開く。両親を亡くした美佐は、高校の3年間を叔母である弥生の家で暮らしていた。ある日、弥生に認知症の症状が見られると役場から連絡があり、美佐は久しぶりに“みどり屋敷”と呼ばれた懐かしい家に帰る。だが、家はごみ屋敷と化し、美しい英国風の庭も荒れ果てていた。美佐は意を決して家を片付け始めるが、その中から鍵のかかった小さな金庫が見つかる…。少子高齢化社会における介護の問題は深刻かつ切実だが、作者は主婦の視点から、認知症患者との関わりや家族の問題をリアルに描いていく。一方で、ミステリーの仕掛けを施すことも忘れない。大量にため込まれた「命の水」、エルメスのスカーフ、そして一世を風靡(ふうび)した大ベストセラー…。互いの家事を交換するという思いつきから生じた悲劇的な顚末(てんまつ)は、純然たる悪意から起こったものではないからこそ、やるせない思いが込みあげる。だが、“イヤ”なままで終わらないのが本作。登場人物それぞれが過去を悔い、現実と向き合おうとする姿に感動を覚える、新たなる傑作だ。