渦 妹背山婦女庭訓 魂結び
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4.4 • 8件の評価
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発行者による作品情報
江戸時代の大坂・道頓堀。穂積成章は父から近松門左衛門の硯をもらい、浄瑠璃作者・近松半二として歩みだす。だが弟弟子には先を越され、人形遣いからは何度も書き直させられ、それでも書かずにはいられない。物語が生まれる様を圧倒的熱量と義太夫のごとき流麗な語りで描く、直木賞&高校生直木賞受賞作。
※この電子書籍は2019年3月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
APPLE BOOKSのレビュー
第161回(2019年上半期)直木賞受賞作。人形浄瑠璃の名作で、現在は歌舞伎演目にもなっている「妹背山婦女庭訓」の作者、近松半二の生涯を描く。江戸時代中期、道楽息子として勘当同然に家を出た主人公が、父からもらった近松門左衛門の硯(すずり)を手に浄瑠璃作家を目指す。後輩に先を越され、創作に苦悩する姿は青春小説のようだが、自身の創作ポリシーを貫き、壮大でファンタジックな演目「妹背山婦女庭訓」を生み出す過程にはワクワクが止まらない。関西弁をベースにした、落語のような講談のような、浄瑠璃さながらにテンポの良い語り口が臨場感たっぷりで、現代では古典芸能となった人形浄瑠璃の世界を生き生きと描き、当時の道頓堀の賑わいが目に見えるよう。高校生が選ぶ高校生直木賞も受賞しているように、人形浄瑠璃を知らない若い世代が読んでも楽しめる、見事なエンターテインメントとなっている。著者の情熱は、スピンオフともいうべき続編『結 妹背山婦女庭訓 波模様』で、さらなる広がりを見せる。