シャドウ
-
-
4.3 • 62件の評価
-
-
- ¥610
-
- ¥610
発行者による作品情報
人は、死んだらどうなるの?――いなくなるのよ――いなくなって、どうなるの?――いなくなって、それだけなの――。その会話から三年後、凰介の母は病死した。父と二人だけの生活が始まって数日後、幼馴染みの亜紀の母親が自殺を遂げる。そして亜紀が交通事故に遭い、洋一郎までもが……。父とのささやかな幸せを願う小学五年生の少年が、苦悩の果てに辿り着いた驚愕の真実とは? いま最も注目される俊英が放つ、巧緻に描かれた傑作。第七回本格ミステリ大賞受賞作。
APPLE BOOKSのレビュー
2011年に『月と蟹』で直木賞を受賞した道尾秀介。精緻なミステリーの書き手として高い評価を得た彼にとって、『向日葵の咲かない夏』と並んで初期の代表作と呼ぶべき一作がこの『シャドウ』だ。巧妙に張り巡らされた伏線や、二転三転する展開の妙といった道尾の持ち味が既に確立されており、2009年の初版時にはミステリー好きの間で大きな話題を呼んだ。がんで母親を亡くした小学生の凰介。父親との2人暮らしが始まった彼の周りでは、幼なじみの亜紀の母親の自死や、亜紀自身の事故、そして徐々に精神に変調をきたしていく父親と、次々に不幸な出来事が起こってしまう。複数の登場人物によって語られるストーリーは時にミスリードを誘い、思わぬ道筋で真実へと迫っていく。さりげなくちりばめられたかすかな違和感が後に大きな意味を持つこともしばしばあり、謎解きのスリルは格別だ。しかし、本作の面白さは、そうしたミステリーの側面にとどまるものではない。丁寧な心理描写でつづる凰介の成長の軌跡はまぶしく、最後には仄(ほの)かな希望、そして温かな読後感に包まれる。