少年と犬
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- ¥850
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発行者による作品情報
第163回直木賞受賞作!犬を愛するすべての人に捧げる感涙作
傷つき、悩み惑う人々に寄り添う一匹の犬は、なぜかいつも南の方角に顔を向けていた。
2011年秋、仙台。震災で職を失い、家族のため犯罪に手を染めた男。偶然拾った犬が男の守り神になった(男と犬)。壊れかけた夫婦は、その犬をそれぞれ別の名前で呼んでいた(夫婦と犬)。人と犬の種を超えた深い絆を描く感涙作。解説・北方謙三
「少女と犬」を文庫で初収録。
※この電子書籍は2020年5月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
APPLE BOOKSのレビュー
東日本大震災の後、ある目的を持って西へと旅する1匹の犬と、その過程で出会った人々との交流を描いた6つの連作ロードストーリー。窃盗団の一味や娼婦など、社会の裏通りで荒(すさ)んだ日々を過ごす老若男女が、行き倒れ寸前のという犬に出会い、共に暮らしていく中で心癒され自分を変えていく。言葉を発しなくとも賢く人に寄りそう多聞と、愚かしくも生きるのに不器用な人々との対比が絶妙。それぞれのストーリーが優しく切なく、そしてユーモラスに展開し、出会いと別れを繰り返しながらクライマックスに近づく。多聞が旅する目的のために、あえて別れを選択する人々の優しさと、それを受け止める多聞との間に芽生える友愛は、犬と人との普遍的な絆ともいえる。ハードボイルド小説の名手であり、愛犬家としても知られる著者ならではの、ただの感動ドラマでは終わらない傑作。犬を通して人間の本質を描いたともいえ、第163回直木賞を受賞した。